6月25日(日)第27回<屋 繁男 詩と歌曲を唄う>ライブを東京・西荻窪のライブハウス「奇聞屋」で行います。
共演は、台湾・日本を股にかける吟遊詩人、二胡シンガーソングライター「里地帰(さとちき)」です。
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「男はつらいよ」を唄うのはつらいよ
平成29年5月3日
屋 繁男
従来不思議に思っていたことがある。あんなに懐かしく、人気のある曲なのに、渥美清本人以外に男の歌手が「男はつらいよ」を唄うことはほとんどなかった。それは、彼の歌の完成度の高さを直感的にわかっているためであろう。つまりコメディアンでもある渥美が喜劇的ペーソスをこめて唄った「男はつらいよ」を越えるような歌唱はとてもできないと男なら思うのは当然である。だから、有名女性歌手が数人唄っていたのは実にうなずける話である。彼女らは「男はつらいよ」を唄うことはつらくないからである。
さて、男性歌手のみならず男達がこの歌をあまり唄わないないしは歌えない理由は実はもっと深いところにある。それは、下町の家族ドラマの体裁をとっているけれどもこの映画は妹サクラを中心にした現代的なオナリ神の物語であり、日本民俗学は柳田邦夫の「妹の力」の物語だからである。つまり渥美清という偉大な歌手との対峙が要求されるだけでなく、文明論的に言うならば、直に吾々の神話の世界に対峙できる力量を要求されるからである。
しかし逆に言えば、このような神話の世界に対峙しなければならないところにこそ「男はつらいよ」の唄の可能性はあるのである。このような試みに歌手の玉置浩二はよく挑戦しがんばっている。彼が始めて他の歌手も歌い始めている。始めたばかりでまだ渥美の「男はつらいよ」に対抗できるものには至っていないが、そのうちに渥美を抜くまでとはいかなくても、彼とは違った歌唱方法で充分納得できる「男はつらいよ」ができることであろう。そうでなければ吾々の歌の世界や神話の世界は委縮していく一方であるからである。
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