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2019/12/06 (Fri) 迷子になったSLマニアの三才の孫

<迷子になったSLマニアの三才の孫>

令和元年12月3日

屋 繁男

 世田谷公園の中にSLランドというものがある。小中学校の校庭よりは少し広いぐらいの広場を円形にミニSLが走っているのである。一般的な遊園地等にある電車などとは違って、本物のSLを小型にしたような、何とも言えぬ哀愁を誘うSLで鉄道ファンにはよく知られたものである。

 先日、三才になる男の孫を連れて行った。まず一周乗った。その時SLの円形グランドの外で子供向けに馬に乗せてもらえると聞いたので、ミニSL駅の円形の反対側に、つまり円の直径を歩くように向かった。暖かい小春日和だった。我々一行が向かった左後方から、ポーという懐かしげな音を立ててミニSLが我々の前を、あたかも誘うように前方を過ぎて右方向へゆっくりと走っていく。それを見ていた三才の孫はたまらなくなって突然走り出した。小生と婆々はあっけにとられてそれを見ていた。途中で追いかけるのを止めると思っていたのだが、彼はドンドン走っていきミニSLが見えなくなるあたりにあった小さな跨線橋を渡って向こう側へ行ってしまった。あわてた婆々は必死になって跨線橋の向こうまで走っていった。しかし孫は見つからず×印の合図をこちらに送っている。

ようやく事の重大さに気付いた小生も跨線橋を渡り、現場に立った。そこは、子供らの雑多な手作りアスレチックや秘密基地のようなものでごった返していた。婆々は、彼がミニSLを追って行ったものと思い、必死に金切り声を上げ名を呼び走って行った。そして、跨線橋から、30メートル程先にあるミニSLの駅まで行った。合図をこちらに送ってきたが、×印であった。婆々の孫を呼ぶ声が続いている。これは大変なことになったと思った。このごった返した人ごみの中から探し出すのは至難なことだ。仕方がないのであちこちを走り回る婆々とは逆に、ほぼ一点に居ながらあっちこっちと少しずつ移動しながら視点を変えて、それこそ眼をこらしながら人ごみの中を見つめていた。

十分位はじーと見ていたが、それらしき影は見当たらなかった。さらに十分程たった。すると人ごみの中から小生の今いる跨線橋に向かって赤いものを小脇に持った幼児が、ゆっくりと移動してくる。孫だ。これは逃がしてなるものかと思い、足を速めて近づくと「こら、勝手に行ったら駄目でしょ…」とビシャーと平手打ちを軽くくわせた。孫を叱ったのは初めてである。あちこちで金切り声を上げて探していた婆々も、ミニSLの駅員らからお孫さんが見つかって、跨線橋にお爺さんとおられると聞かされて、ようやく安どの表情を浮かべた。

 この三歳の孫はいわゆる鉄道マニアで、小生は三度も都電荒川線に連れて行かされている。他に京王レールランド、その他のSLの設置されてある飛鳥山公園や中野の公演や、果ては青梅のSL鉄道公園等である。そもそも爺々である小生の家にやたら来たがるのも、近所に電車庫があるためである。

 たいがい甘い爺々である小生であるが、いまだ近所の跨線橋には連れて行かないでいる。そこは例の太宰治が富士山を遠望するためによく訪れたというところで、かれの遺跡の中で唯一現存するものなのであり、近年は多くの鉄道マニアが見学に訪れるところなのである。そんなところに小生が孫をいざなえば、それこそ鉄道マニアを超えて鉄道中毒になってしまい、母親や婆々、爺々の目を盗んで一人で、その跨線橋に行くことは間違いないからである。今のところ、小学生になってからということにしてあるが、しかしいつまでもつか分からないのである。

 

 

 

人ごみに迷子になった吾孫は

消防車を小脇に現れ出でたり

令和元年1110日(日)

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